【10 耐久レースを楽しもう - タミヤRCスタートガイド -】
耐久レースを楽しもう!
実車の世界でも、ル・マン24時間やニュルブルクリンク24時間など、レーシングカーやGTカー、ツーリングカーのビックレースは長距離・耐久レースで行われています。長距離レースの特徴は、必ずピットワークがあるということでしょう。燃料補給をはじめ、タイヤなどの消耗品の交換、ドライバーの交替、故障や事故による破損の修理など、様々な作業がピットで行われています。RCカーで長距離レースを行う場合も同様です。バッテリーの交換や燃料補給は必ず何回かしなければなりません。また時には思わぬ故障や事故による破損も修理しなければなりません。またRCカーの長距離レースもチームを組んで行われます。それだけに車の速さや操縦テクニックはもちろん、迅速なピット作業やドライバーへの的確な指示など、チームワークが勝利のための重要なポイントです。スプリントレースにない面白さがあるだけに、ぜひ仲間とチームを組んで挑戦して下さい。1.長距離レースの車作り
長距離レースでは、必ずしも高性能な車が勝つとは限りません。ウサギとカメの話と同様に、性能的に劣る車が勝つ場合も十分にあるのです。無理に性能アップして速い車を作ったとしても故障ばかりしているようなら、勝つことはもちろんレースに完走することさえ難しくなります。逆に車のスピードは遅くても、バッテリーの交換や燃料補給回数が少なく、事故や故障がなければ勝つことも十分に可能です。長距離レースでは短かくても30分、長ければ2時間以上にわたって走り続けることができる速さ(必要なピットワークも含めて)が勝敗を決めるのです。信頼性、耐久性の高さが第1条件
キットからそのまま作った車なら、信頼性や耐久性はまず安心できるでしょう。ただ、組立てが確実に行なわれていなければ信頼性や耐久性も低下してしまいます。耐久レースにエントリーするマシンは、とくに次のような点に注意するとよいでしょう。■(1)ネジ類は確実にしめ込み、必要に応じてネジ止め剤などでユルミ止めを。
■(2)頭のつぶれたネジや角のつぶれたナットは新しいものに交換。
■(3)プラスチックパーツは、特にタッピングビスなどで何度もネジの取り付け、取り外しをくり返すと穴が広がり気味になって少しのショックでも外れがち。できればパーツを新しいものに。
■(4)両面テープは新しいものに貼り変える。
■(5)コード類はナイロンバンドなどで束ねてシャーシにしっかりと止める。
■(6)性能アップは各部の強化をポイントに。軽量化は強度低下につながりがちです。あくまでも強度に大きく影響をしない範囲で手を加えます。
モーター、エンジンのクーリング
耐久レースで注意したいのがモーターやエンジンの加熱防止。冬は別としても、初夏から秋にかけては路面近くの温度は相当に高くなります。それでなくても長 時間走り続ければモーターやエンジンはかなり熱を持ちますから、効率的に冷却するヒートシンクをつけたり、大型タイプに換えておきたいもの。またヒートシ ンクは風があたるほど効果が大きくなります。ボディに穴をあけ、走行風を積極的にモーターやエンジンにあてる工夫も必要になります。なお、その場合は風を 入れるだけでなく、抜ける穴もあけることが大切。もちろん、スケール感をこわさないことも十分に考えて下さい。
整備性の良さが勝利につながる
耐久レースを有利に進めるためにはバッテリーの交換や燃料補給のためのピット作業の時間を短縮するのも重要です。素早い作業のために練習をくり返しすことも大切ですし、脱着しやすいボディの取付方法やバッテリーの搭載方法などを工夫するのも有効です。また、スペアタイヤをあらかじめホイールに接着しておいたり、パーツ交換に必要な作業を先読みして、組めるパーツはあらかじめ組上げた状態で用意するのも重要です。ビッグパワーが有利とは限らない
スプリントレースでは高性能なモーターやエンジンが有利ですが、長距離レースでは必ずしもそうとは限りません。高性能なモーターやエンジンではバッテリーや燃料の消費が多くなり、それだけピットインの回数も多くなりますし、タイヤへの負担も高まるのでタイヤの減りも早くなります。さらにスピードが出る車は操縦ミスも起こりやすくなりますし、衝突時やコースアウト時の損傷がひどくなり、修理に手間取ることも考えられます。逆に言えば、高性能なモーターやエンジンは、ピット作業が素早くでき、ドライバーの腕のそろったチームでないとその性能を生かせないことになります。2.長距離レースはチーム力の戦い
いくら速い車を作っても、ピット作業に時間がかかってはレースには勝てません。自分のチームの車がコースアウトしたら素早く助け上げてコースに戻すことも必要ですし、バッテリーの交換や燃料補給のタイミングをドライバーに指示したり、その準備も必要です。ドライバーは、疲れなどを考えると2人以上が交替で操縦したいもの。仲間と楽しむための長距離レースですから、全員が交替でドライバーやメカニックになってもよいのですが、必要な作業を協力し合って確実に行うことが大切です。チーム構成と役割
耐久レースでのチーム構成は、ごく大まかに言えばドライバー、メカニック、タイムキーパー、そしてチーム監督(チームリーダー)になります。★ドライバー
基本的にドライビングに専念すればよいのですが、走行中の車の変化をいちばん敏感に感じ取れるのもドライバーです。予想以上にバッテリーの減りが早く、車のスピードが落ちてきたようならメカニックに知らせるなど、常にチームと連絡を取り合いましょう。また交替ドライバーに車の状態やコースの状態を伝えることも大切です。
★メカニック
交換用のバッテリーやパーツ類、補給用の燃料、それに必要な工具などいつでも使えるように準備しておきます。特に注意したいのはバッテリーなどの電池類。新しいものと使用ずみのものがはっきり解るように区別しておかないと、レースのあわただしい雰囲気の中ではミスが起きます。また走行中の車に常に注意して、コースアウトしたり、トラブルなどでストップしてしまったらすぐに助け上げに駆けつけるのもメカニックの役割です。
★タイムキーパー
タイムキーパーは、レースの作戦を立てるためのデータを記録する重要な役割です。できれば毎周のラップタイムは記録したいもの。レーススタートからの時間経過や周回数をしっかり把握できれば、効果的なバッテリー交換や燃料補給のタイミングを見極められるでしょう。余裕があればピットインした周回数と時間、ピット作業の内容と所要時間なども記録しておけば次のレースで役立つデータになります。
★チームリーダー
チームをまとめ、レースの戦略を決めるのがリーダーの役目。 レース中はライバルチームの動きなどもよく観察してペースや周回数の差を頭に入れておき、タイムキーパーと相談しながらペースの上げ下げやバッテリー交換、燃料補給のタイミングなどを指示します。レース終盤でライバルとの差が少ない時などは、リーダーの指示ひとつが勝敗を決定づけることも少なくありません。
定期的なピット作業
バッテリーの交換や燃料補給などのための定期的なピットインは欠かせませんが、それ以外のピットインはできるだけ減らしたいもの。そのためには、定期的なピットインの時に、必要と思われる他の作業も一緒にしておくべきです。タイヤの交換や受信機、送信機用電池の交換などもそうですし、ネジ類の増し締めもしておきます。露出しているタイプのギヤなら、歯の状態のチェックや注油もしておきます。トラブルでのピットイン
衝突やコースアウトで車の走行状態がおかしくなったときには迷わずピットイン。わずかな異常だからといってそのまま走らせていると、トラブルがひどくなって修理に手間取ったり、修理不能でリタイヤにもなりかねません。衝突などがなくても、ステアリング特性が急変したり、スピードコントロールが不調になったらすぐにピットインして修理しましょう。ただ、レース終盤でのトラブルは判断が難しくなります。不調の度合いやレースの残り時間、他チームとの差を考えて決めるわけですが、とりあえずピットインさせて原因を調べ、修理に手間取るようならそのまま走らせることになるでしょう。用意する工具、スペア部品
工具類は、ふだんから使っているもので十分ですが、ボックスドライバーやEリングセッターなど、それなりの専用工具があった方が作業はスピーディにできます。さらにグラステープやアルミグラスメッシュテープ、針金なども応急処理に役立ちます。接着剤は、接着時間を考えれば瞬間接着剤しか使えないでしょう。また、スペア部品はもう1台同じ車ができるだけの部品をそろえておきたいもの。受信機やスピードコントロールアンプ、サーボもそうです。中でもステアリング関係、ギヤ類、ジョイント類、サスペンションパーツなどは、コースアウトや衝突で痛みやすいので余分に用意します。組立てが必要なものはあらかじめ組立てておき、そのまま車に組込める状態にしておきましょう。タイヤ交換
スポンジタイヤなら、路面状態にもよりますが2時間程度なら交換の必要はないでしょう。ただ、コースアウトや衝突でスポンジがちぎれたりする可能性はあります。中空ゴムタイヤは2〜3回の交換の必要があるようです。スポンジタイヤなら両面テープで、中空ゴムタイヤなら瞬間接着剤で(必要に応じてインナースポンジもセットして)ホイールにしっかりと取付けた状態でストックしておきます。バッテリー交換、燃料補給
あらかじめレースに使う車を用意して、バッテリー1パックや満タンで走行できる時間を調べておきます。もし耐久レースの開催コースで練習できるなら周回数を調べておき、レースの長さから必要な本数や量を算出します。ただし、実際に用意するのは計算よりも余分にします。レース中には衝突やコースアウト、ライバル車との競り合いなどで、コンスタントに走っている時よりもバッテリーや燃料の消費が多くなるからです。RCカー用の走行用バッテリーは容量がなくなるまであまりパワーが低下せず、スピードも落ちませんが、ある時点から急激にパワーやスピードがダウンします。交換のタイミングを一周間違えただけで大幅なタイムロスにつながる場合もありますから要注意です。RCプロポの電池
2時間程度のレースでは、ほとんどの2チャンネルプロポの送信機は電池交換の必要はありません。また、受信機用電池は電動RCカーでは走行用バッテリーを共用しますから、その交換を確実にすれば問題ありません。エンジンRCカーの場合は、2時間程度のレースになると受信機用の電池の交換が必要な場合もあります。なお、エンジン・電動に限らず、RCシステム用電池の予備は忘れずに用意しておきましょう。
3.長距離レースのレーステクニック
長距離レースはマラソンのようなもの。常にライバルとせり合っていては自分のペースを失い、勝利は遠のきます。コンスタントにマイペースに徹した走行を続けることが、勝利の条件です。■スタート
特に急ぐ必要はありません。それより他車との接触に注意すべきです。衝突やコースアウトで修理が必要になれば、あせりを生んでその後のペースも乱れがちになります。最初の2〜3周は特に慎重な操縦が大切です。
■追い越し、追い越され
周回を重ねていくと、他の車のペースもよく解るようになります。遅い車を追い越す時はできるだけ直線部で。もしコーナーで追いついてしまったら、脱出する時に内側から追い越すようにすべきです。また、速い車と競い合うようなことはさけるべきです。ラインを譲って追い越させてあげましょう。無理に速い車のラインをふさいだりするのは衝突やコースアウトにつながって、双方にとって得なことではありません。速い車は定期的なピットイン回数も多いので、その間に抜き返すというつもりで、自分のペースを崩さずに走りましょう。
■コーナリングは余裕を持って
ここ一番の追い込み、というような時は別として、ギリギリにインをつくようなコーナリングはしない方がよいでしょう。ミスによるコースアウトや事故などによるタイムロスの方が大きくなるからです。また余裕のある走行の方がバッテリーや燃料の消費も少なくなります。
■勝つためのペースアップ
長距離レースだからといって、ラインをライバルに譲るだけでは勝てません。時にはペースをあげることも必要です。ただそのペースのあげ方は、何周かかけて相手を追いつめる、あるいは引き離すといった方法にすべきです。相手のペースに巻き込まれることなく、自分のペースを少しづつ上げていきます。
4.長距離レースを記録する
レース時間の長い長距離レースでは、ぜひ次のような記録をとっておきたいものです。記録を見ながら仲間と一緒にレースを振り返れば話題も弾みます。それにどんなところでタイムロスしたかもはっきり解り、車の改良、チーム力のアップなど次回のレースの好成績をより確かなものにすることができます。
【記録しておくと役立つもの】
★車のセッティングはどうだったか?
モーターやエンジンの種類、ギヤ比、タイヤの種類、ダンパーのセッティング等
★気象状態はどうだったか?
天候や気温の変化
★レース経過はどうだったか?
ラップタイム、ピットインした周回数、ピット作業にかかった時間と内容、順位経過、ドライバー交替など