【06 ギヤ比を学んでセットアップ】
ギヤ比セッティングは走行性能の鍵
RCカーの加速性能やトップスピードを高めたい時にまず思い浮かぶのがモーターの 交換ですが、より細かな調整ができるのが「ギヤ比」のセッティング。今回は「ギヤ比」を 理解して、走行させるコースレイアウトにベストマッチしたギヤチョイスを学ぼう。
■ギヤ比をマスターする
■ギヤ比の変更手順
■TT-02シャーシギヤ比表
■目的のギヤ比を見つけよう
■ギヤ比指定のレースも
ギヤはパワー伝達のキモ
ほとんどの電動RCカーは、ギヤ(歯車)を使ってモーターの回転をタイヤに伝えています。マシンによって使っているギヤの形や数はいろいろ。ギヤの組み合わせがマシンの特性を決める要素の1つになっています。タミヤのRCカーの多くはギヤを交換して走行特性を変えることが可能。走行場所やモーターに合わせて、ギヤを選んでセッティングするのもホビーRCの面白さです。
ギヤ比ってなんだ?
RCカーのギヤを交換する際に使われるキーワードが「ギヤ比(Gear ratio)」。ギヤ比とは「タイヤが1回転するのに必要なモーターの回転数」を示す比率のことです。例えばモーターが8.27回転した時にタイヤが1回転する設定のギヤ比を《8.27:1》と表します。RCカーの多くは、ピニオンギヤと呼ばれるモーターに直接取り付けるギヤを変えることでギヤ比を変更して加速力を上げたり、トップスピードを高めることができます。タミヤでは歯数の違うピニオンギヤを豊富にラインナップして、細かなセットアップに対応しています。今回はこのギヤ比を変更するとマシンの走行特性がどのように変わるのか学んでいきましょう。
- ギヤ比=タイヤが1回転するのに必要なモーターの回転数
加速力を重視するなら
タイヤが1回転するのに必要なモーターの回転数を多くすることをギヤ比を大きく(ローギヤともいう)すると言います。ギヤ比を大きくする方法は、歯数の少ないピニオンギヤに交換すること。その効果は、マシンの加速力が上がりスタートダッシュやコーナーの立ち上がりが鋭くなり、トップスピードの伸びは悪くなります(変速機付き自転車にたとえると、低いギヤで走るのがこの状態に近いでしょう。軽くペダルをこぐだけでスタートでき、坂道も楽々登れますが、スピードがだせません)。小さなコーナーが連続するようなテクニカルサーキットなど、加速減速を繰り返すようなコースに適しています。荒れた路面を走行するオフロードカーや岩場をパワフルに走るクローラーなど、瞬発力が必要なマシンもギヤ比を大きく設定しています。また、モーターへの負荷が少ないためバッテリーの消費が抑えられ、走行時間が伸びるのもメリットです。
最高速を上げるには
一方、ギヤ比を小さく(ハイギヤともいう)すると最高速度が伸びます。歯数の多いピニオンギヤに交換することで、タイヤが1回転するのに必要なモーターの回転数を少なくできるからです。ただ、加速性能は低くなります(変速機付き自転車で高いギヤで走るのに近く、ペダルは重いですが最高速度は上がります)。ストレートが長いサーキットなど、最高速を重視するコースに適していますが、モーターへの負荷が大きくバッテリーの消費が多いので、走行時間は短くなります。
- ピニオンギヤの歯数とギヤ比の関係
- ギヤ比の違いによる走行特性の変化
ギヤの歯数の単位は「T」
ギヤの歯数の単位には、Teeth(歯)の頭文字「T」が使われます。「63T」と表記されているギヤは歯数が63枚あり、ピニオンギヤとスパーギヤの部品名にも歯数が表記されています。また、ほとんどのギヤパーツには歯数を示した彫刻があるので、パーツが混ざってしまったときにも安心です。
- スペアパーツの口紙にも歯数が記載されています。
事前の準備が大切
お手持ちのシャーシの説明図には、使用するピニオンギヤの歯数とそのときのギヤ比が記載されています。ギヤ比を変更するときには事前にチェックして、適合する歯数のピニオンギヤを準備しましょう。ギヤ比をキット標準値から小さくする場合は特に、モーターやRCメカへの負荷が増すため駆動系の軸受けには必ずボールベアリングを装着して、軽く回るようにします。
ギヤ比を変えてみよう
ツーリングカーのTT-02シャーシを例にギヤ比を小さくして、最高速重視のセットアップをしてみましょう。まずモーターを取り外し、ピニオンギヤをキット標準の22T(ギヤ比8.27:1)から25T(ギヤ比7.28:1)に交換。一般的にピニオンギヤの歯数を変えたときは、ピニオンギヤとそれに噛み合う「スパーギヤ」と呼ばれる平ギヤとの隙間(バックラッシュ)調整が必要です。ただ、TT-02シャーシはモーターマウント(D9パーツ)への取り付け位置を組立説明図の指示に合わせるだけで最適なバックラッシュになり、調整なしに車体に組み付けられます。最後にタイヤを手でまわして、スムーズにピニオンギヤが回転しているかチェックしましょう。
- TT-02シャーシではバックラッシュ調整が不要。
- モーターを組み付けたときにギヤどうしがしっかり重なるように、ピニオンギヤの取り付けネジを緩めて調整しよう。
ギヤ比の変更幅を広げる
さらに、歯数の違うスパーギヤを取り付けることができるシャーシなら、ピニオンギヤの交換と合わせてギヤ比をいっそうワイドにセッティングすることができます。ギヤ比を大きくする場合は歯数の多いスパーギヤに、逆にギヤ比を小さくする場合は歯数の少ないスパーギヤに交換。ギヤ比をさらに小さくして最高速を上げることも可能です。TT-02シャーシでは「OP.1500 TT-02 ハイスピードギヤセット(68T)」(別売)を装備すれば、スパーギヤがキット標準の70Tから68Tになるのでギヤ比が小さくなります。さらにギヤ比を小さくしたい場合は「SP.1356 TB-03 06スパーギヤ(64T)」(別売)への追加交換も可能。スパーギヤだけのギヤ比変更は変化量が少ないものの、歯数の多いピニオンギヤが使用できるためギヤ比をより小さくできます。
最適なギヤ比とは?
ギヤ比を大きく変えるのは禁物。特にギヤ比を大幅に小さくするとモーターやRCメカに大きな負荷をかけてしまいます。走行後のモーターが異常に発熱しているようなら、ギヤ比の設定に無理があるのかもしれません。最悪の場合マシンが壊れることもあるので注意しましょう。サーキットのコースレイアウトに合わせて調整するときは、試走しながら少しずつ変更したほうがフィーリングをつかみやすくセットアップの近道です。その他に、モーターを交換した時にギヤ比の変更が必要な場合があります。例えば高回転タイプのモーターに変えてもギヤ比が大きいままだと、すぐにモーターが回りきってしまい本来の性能を発揮できないことも。モーターの特性に合わせたギヤ比の選択も重要です。
メンテナンスも重要
ギヤは高回転で噛み合い負荷がかかるパーツです。細かなゴミや埃が付いたり、傷や欠けがあると抵抗になり、本来の性能が出せないばかりか故障の原因にもなります。定期的にクリーニングと点検を行い、すり減っている場合は早めに交換しましょう。説明図でグリスを塗る指示がある箇所はグリスアップも忘れずに。
タミヤのRCカーレースではギヤ比が決められたカテゴリーが多くあります。マシンの操縦に慣れ、レースにチャレンジするときは参加申込書やタミヤホームページをチェック。ギヤ比指定の場合、参加申込書にシャーシ別の指定ギヤ比が記載されているので、ピニオンギヤとスパーギヤを指定されたパーツに変更しておきましょう。レース当日あわてないように動作チェックも忘れずに。参加申込書の表記がよくわからない場合は、レース前にタミヤグランプリ係に問い合わせましょう。