【09 コーナリングの要、デフ】
コーナリングの要、デファレンシャルギヤについて学ぼう
車がコーナリングするときに重要な役割を担う装置がデフ(デファレンシャルギヤ)。実車が装備しているのはもちろん、RCカーのほとんどに標準でデフがついています。今回はデフの種類と機能についてTT-02シャーシを使ってOP(オプションパーツ)も交えながら学んでみよう。
■デフって何だ?
■TT-02シャーシのデフ
■RCならではのボールデフ
■オイルが秘訣!?
■ワンポイントアドバイス
■オイル注入式ギヤデフについて動画で確認
車がコーナーを曲がる時、下の図でわかるように4本のタイヤはそれぞれ異なる軌道を描きます。外側のタイヤの方が内側のタイヤよりも大きな円を描くので進む距離が長く、内側のタイヤより多く回転しないとスムーズなコーナリングができません。このコーナリング中の内側と外側のタイヤの描く円の大きさにあわせて、それぞれのタイヤが最適な回転数になるように自動的に調整しているのがデフ(デファレンシャルギヤ)です。RCカーを持ち上げてタイヤを手で回すと左右のタイヤが逆回転しますよね? それがデフを搭載している証。デフが搭載されているのはモーターのパワーを伝えて回転する左右のタイヤの間。前輪駆動車ではフロント、後輪駆動車ではリヤ、4WD車では前後にそれぞれ1つずつ搭載されています。
- コーナリング中のタイヤの軌道はそれぞれ異なった円を描く。
ギヤを組み合わせたデフ
TT-02シャーシはベベルギヤを組み合わせた構造の「ギヤデフ」と呼ばれるデフを装備しています。直進状態ではデフ全体が回転してパワーを左右のタイヤに伝え、コーナリング中は内部のベベルギヤが回転して両輪の回転数の差を調整してスムーズなコーナリングを可能にします。また部品点数も少なく構造も簡単なので、組み立てやすいのも特徴です。ただ、片側のタイヤが路面から浮き上がった場合、浮き上がったタイヤだけにパワーが伝わって空転し、接地しているタイヤにパワーが伝わらないため、車の進む力が失われるのが欠点です。
オプションパーツのデフもラインナップ
TT-02シャーシにはOPパーツとしていくつかのデフがラインナップしています。OPのデフは、キット標準のデフの欠点でもある空転を防いで車の進む力を引き出すだけでなく、効きの調整もできる優れものなのです。
- ギヤを組み合わせたデフ(ギヤデフとも呼ばれます)
転がる金属球が大活躍
OPのデフの1つがボールデフ。名前のようにボール(金属の球体)をデフプレート(説明図では17mmスラストワッシャー)ではさんだ構造が特徴です。TT-02用は「OP.663 ボールデフセット(TT-01・TGS)」がそれ。直進時はボールが回らないので左右のデフプレートが同じ回転になり、コーナリング中はボールが回ってプレートに回転差が生まれ、左右のタイヤの回転数を調整します。ボールをはさむデフプレートの力をネジの締め込みで調整してデフのセッティングが可能。また、片輪が路面から浮きあがっても、ボールとデフプレートが押しつけられているので、もう一方のタイヤにもある程度のパワーが伝わり、ギヤデフのように進む力が完全に失われることがありません。特性としてはロースピードのモーターでの走行、パーキングロットやタミヤグランプリの特設コースなどグリップが低い路面に適しています。
- OP.663 ボールデフセット(TT-01・TGS) ※写真はOPを組み立てたものです。
ネジ一本でセッティング
ボールデフの調整はネジ(2×10mmキャップスクリュー)の締め込みで行います。調整用ネジをいっぱいまで締め込んだ位置から1回転戻した位置までが調整範囲。ネジを締め込むとデフの動きは重く、ゆるめると軽くなります。締め込みがゆるいと、急加速したときなどにボールとデフプレートが滑り、デフが空回する(滑る)ことがあります。 これではモーターのパワーをロスし、デフの性能が発揮できません。組立時にデフの滑りを確かめるには、上の写真のようにカップジョイントの両側にレンチやピンセットなどを通して回転しないように固定。その状態でリングギヤを回します。簡単に回ってしまうようならデフが滑っているので、回らなくなるまで調整します。滑らずに軽くスムーズに動作するのがボールデフの理想です。また、走行を重ねるとデフがゆるむことがあるので、定期的に締め込み具合を確かめましょう。
グリスアップはたっぷりと
ボールとデフプレートに塗るボールデフグリスは塗る量が少なすぎるとパーツの偏摩耗につながるので、やや多いくらいに塗りましょう。デフからグリスがはみ出てしまったらティッシュでふきとれば大丈夫。付属のボールデフグリスにかえて、より高性能な「 VGボールデフグリス(42169)」(別売)の使用もおすすめ。なめらかな動作とともにボールデフの寿命も延ばします。
メンテナンス
ボールデフはゴミが付いたり汚れたり、グリスがなくなることが大敵。ボールやプレートが摩耗すると本来の性能が発揮できません。定期的に分解・清掃とグリスアップをして組み直しましょう。デフプレートにはボールが転がってついた溝ができますが、浅いものなら大丈夫。溝が深く、デフを手で回してゴリゴリと引っかかる感じがしたら交換時期。こんな時はボールも傷んでいる場合が多いので、同時に交換しましょう。
オイルを満たしたデフ
もう一つのOPのデフが「OP.1875 TT-02 オイル注入式ギヤデフユニット」です。キット標準と同じベベルギヤを使ったデフで基本的な構造もほとんど同じですが、名前の通りデフケース内にオイルを注入。そのオイルの抵抗を利用してデフの動きを抑えます。そのためキット標準のデフギヤの欠点だった、タイヤ空転時のパワー抜けもオイル注入式ではかなり防ぐことができます。ギヤケースはパッキンやOリングでシーリングされているので、オイルが漏れにくい構造。ハイパワーモーターを搭載した時や、ハイグリップ路面での走行に適しています。
- OP.1875 TT-02 オイル注入式ギヤデフユニット ※写真はOPを組み立てたものです。
オイルを変えてセッティング
オイル注入式ギヤデフは粘度(硬さ)の違うオイルに入れ替えることでセッティングの変更ができます。粘度の高いオイルではデフの動きは重く、低いオイルでは軽くなります。オイルの粘度は「#3000」などと表記され、数字が大きくなるほど粘度が高くなります。タミヤでは#700〜#1000000のギヤデフに使えるオイルをラインナップ。走行状況に合わせ変更してみましょう。
メンテナンス
走行中のデフは高速回転しているため、徐々にデフオイルが減っていきます。ある程度走行したらデフをチェックして、オイルをつぎ足しておきましょう。硬さの違うオイルに交換するときは、「ITEM 87039 タミヤRCクリーナースプレー」を使って古いオイルを取り除き、新しいオイルと混ざらないようにします。その際、5mmOリングやオイルシールも交換。さらに、グリスアップも忘れずに。おすすめは「ITEM 42129 VGダンパーグリス」。シール効果が高くオイル漏れを防ぎ、動きもスムーズ。もちろん新品を組み立てる時にも有効です。
オイルの量は一定に
デフオイルは、説明図にしたがってベベルデフアクスルの位置まで入れます。入れすぎるとデフの動きが悪くなるので注意。同じ硬さのオイルなら、同じ量を入れれば毎回同じ効き具合になりますが、オイルの量を目分量で測ってもバラツキが出てしまうので、ハカリを使って重さでオイル量を管理するのが良いでしょう。そのために、オイルを入れたデフの重さを記録しておきましょう。
前後デフの硬さバランス
前後にデフを装備する4WD車はリヤのデフに対してフロントのデフを重めに調整すると、一般的にはコーナーの立ち上がりが良く、バランスのいい走行フィーリングになります。セッティングの基本はリヤのデフをスムーズに動作させること。これを基準に、走行条件に合わせてフロントのデフの調整を行うのが良いでしょう。カップジョイントに注意
デフをOPパーツに交換するときに注意するのがカップジョイント。「OP.663 ボールデフセット(TT-01・TGS)」はTT-02シャーシに標準装備されている樹脂製ドライブシャフト用の大きなサイズ。「OP.1875 TT-02 オイル注入式ギヤデフユニット」はユニバーサルシャフトや金属製ドライブ(TT-02RやTT-02RRなどで標準装備)用の小さなサイズです。 交換する時は別売のカップジョイントが必要です。(適合は下表を参照)オイル注入式ギヤデフユニットは構造上カップジョイントが変更できないため、樹脂製ドライブシャフトを使用している場合はユニバーサルシャフトに変更する必要があります。- ※TT-02RRシャーシに53663を装着する場合はキット標準のドライブシャフトを使用してください(ユニバーサルシャフトとの併用はできません)。
インターネット配信番組「タミヤRCカーグランプリ Vol.27
番組内のコーナー「かえひろみのRC女子部でGO!」でオイル注入式ギヤデフについて紹介。25分30秒ぐらいからスタートします。