人形改造コンテスト 第52回入賞作品発表

侍ジャパンのWBC優勝をはじめスポーツの話題が大いに賑わいを見せた2023年。アスリートたちの感動のシーンが目白押しで、作品の題材選びに悩んだ方も多かったのではないでしょうか。

さて今回の金賞獲得は佐藤邦彦さんのWBCのSAMURAIたち。ユニフォームのストライプも見事に再現され、出品回数最多の佐藤さんの卓越した技術は今年も健在。ひとりひとりのポーズは皆異なりますが、群像として破綻なく一体感を生み出す構成力にも注目です。銀賞の戎井聖貴さんはイギリス軍空挺部隊の小型オートバイから発想をふくらめた楽しい作品。兵士の姿は軍の制服のまま、オードバイだけが進化しているギャップがユーモラス。横一列に整然と並んだ兵士の配置も面白さをより引き出しています。銅賞の谷川晃さんの作品はCMにも登場して話題となった鎌倉時代の彫像。口から流れ出る6体の神秘的な像も再現され、鎌倉時代からの長い年月を感じさせるエイジングを強調した質感表現とあいまって単体作品ながら存在感があります。話題賞は2023年に注目を集めた人物のそっくりさん作品3点。まずは大ヒットドラマのキーマンを繊細なタッチで作り上げた淺木紳士郎さん。顔の造形力や塗装技術の高さは、さまざまなそっくり人形で出品を続ける淺木さんの真骨頂ともいえる作品です。WBCでの佐々木朗希投手とチェコ代表選手との心温まるエピソードがニュースにもなった永島健司さんの「おわびのお菓子」は、人形の柔らかな塗装表現と台座のモチーフが実にほっこり。そして迷彩服でお笑い界を匍匐前進!ブレイク芸人のやす子は近藤一義さんの作品。1/35では見慣れた服装ですがいつもとちょっと違った感覚ですぅハイ〜。

2次元の題材を立体化する場合、陰影の表現が重要なポイントになります。新人賞獲得の澤崎紘美さんの作品は、絵画の顔のシャドウ部分を実際に暗い色で塗り込めることで陰影をつけ、耳元の真珠を際立たせています。同じく新人賞の刑部順さんは日本の古典文学をモチーフにコンテスト初挑戦。甲冑や服装の繊細な仕上がり、そして顔の造作も肖像画のイメージが巧みに盛り込まれ、造形技術の高さを感じる作品です。アイデア賞は小泉八雲の代表作『Kwaidan』をはじめとした小説の場面を組み合わせた八木博顕さんの作品。空間を生かしながら3つの情景が1つの世界にまとめられ、八雲が執筆で使用していた机が主人の存在を物語っています。ジュニア賞は高校1年生の山田省平君。兵士が一服する様子をタバコの煙まで表現。ベースはMMシリーズ第1作のドイツ戦車兵、頭部には最新のモデルが使用され、時を超えた新旧キットのコラボレーションも人形改造の楽しみと言えるでしょう。

ベースとなる人形の種類もますます増えています。自由な発想でぜひ次回もご参加ください。

入賞作品

【金 賞】

[作者] 佐藤 邦彦(77)岩手   [題名] 侍ジャパン WBC2023優勝

以前はまったく野球に関心がなかった人もファンにしてしまった「侍ジャパン」の感動シーンを立体化。抱き合うバッテリーに駆け寄る選手5名が飛び跳ね、空中にある様子を(周東選手の右足1本で6名を支え、手足などの接触によって)実現させた。ユニフォームのストライプや選手名などのロゴは大きく描き、縮小コピーして貼り付けることで大きさや間隔を統一できた。大きく口を開いた喜びの顔は、同じ表情になりがちで似せるのは困難。極小の歯を上下につけて(ユニフォームのみ参加の選手も含め)総数17体(?)となった。

  • 【銀 賞】

    [作者] 戎井 聖貴(52)宮崎
    [題名] Beyond time

    2023年9月、新型の電動ミニバイク「モトコンパクト」の発表を見てすぐにこのアイデアを思いついた。イギリス陸軍空挺団小型オートバイは伸ばしランナーでワイヤー類を追加。モトコンポは3Dキットを流用し、モトコンパクトは図面を起こしてフレームから組み上げた。特に後輪はポンチで抜き出したプラバンを9枚重ねて特徴的な3本スポークを再現。人形はヘルメットにガーゼ、ライフルスリングにはマスキングテープを利用。配置が単調にならないように何度も位置を調整し、作品全体を通して遊び心を忍ばせてみた。

  • 【銅 賞】

    [作者] 谷川 晃(53)埼玉
    [題名] 空也上人像

    諸事情で遅れての短い製作期間。作品に選んだのは空也上人像。もとから彫刻されたものだし、小さく真似れば良いと思っていたが甘かった。実物を見たわけではないので数枚の画像を頼りに製作。衣服のシワの山と谷はどこでつながるのか?どの程度の凹凸なのか?と謎解きパズルのようだった。3回ほどやり直した部分もあり、頭・手足・胴体半分と切り離して見直したりもした。当初、太くしたくない口の南無阿弥陀仏はどうするか?と考えていたが、気がついたら伸ばしランナーで作って仏像本体をパテで太くしていた。

  • 【話題賞】

    [作者] 淺木 紳士郎(55)東京
    [題名] ノゴーン ベキ

    普段ドラマはめったに見ないのですが、知人の文献がこのドラマVIVANTの元になったと聞いて見始めたところ、毎週日曜日が待ち遠しくなるほど見入ってしまいました。登場人物のひとり、ノゴーンベキを演じた役所広司さんの存在感は群を抜いていて、テーマ選びはとても容易でした。製作にあたっての新たな発見は、泣き顔を似せるのはことのほか難しいということ。近年、ひとつの作品に対して、あまり製作時間をかけられず、単体作品ばかりになってしまっているのが悩みです。

  • 【話題賞】

    [作者] 近藤 一義(61)山口
    [題名] やす子

    皆さんの作品を見るたびに、今年こそは大作をと決意するのですが、なかなか思い通りにいきません。ということで今回も1体物で勝負することに。テーマに選んだのは同郷・山口県出身の「やす子」さん。MMの陸上自衛隊オートバイ偵察セットを使用しました。やす子さんの身長に合わせ、高さを46mmまで縮小し、ポーズはお決まりの敬礼スタイルに。自衛隊感を出すために、89式小銃とアメリカ軍の現用品を改造して作ったヘルメットを持たせました。塗装の難易度が高い迷彩服は透明デカールに柄を印刷して使用しました。

  • 【話題賞】

    [作者] 永島 健司(59)宮崎
    [題名] WBC2023 おわびのお菓子

    侍ジャパン優勝!で盛り上がったWBC2023。個性あふれる選手たちの活躍と、数々の感動のドラマがありました。これを人改のテーマに!と思ったものの、選手を全員作る?(汗)誰かに絞るにも決められない。そんな中、球場外でのほっこりする出来事が話題になりました。日本×チェコ戦で、佐々木朗希選手がエスカラ選手に160km/hを超えるデッドボールを当ててしまい、後日お菓子を持って謝罪に。なんとも微笑ましい2人の様子を見てテーマに決めました。話題賞の賞金を何に使う?もちろんロッテのお菓子を買います(笑)

  • 【新人賞】

    [作者] 澤崎 紘美(42)広島
    [題名] girl with a pearl earring

    製作するなら自分の一番好きな絵画にしようと思い選びました。表現するうえでクリアしたかったのは、誰でも知っている有名な作品なので、忠実に再現しなければならないこと、フェルメールの特徴でもある「光」をうまく再現すること、顔の周囲しか描かれていない作品本来の雰囲気を損なわないように全身を作ることの3点でした。製作で一番難しかったのは顔、特に表情でした。口をうっすら開けている様子は、納得する まで何度もやり直しました。今回の経験でさらに製作意欲が沸いたので次回作にもチャレンジしたいです。

  • 【新人賞】

    [作者] 刑部 順(45)千葉
    [題名] 楠木 正成 / 北畠親房と顕家 [別画像]

    題材は軍記物語と太平記で描かれた人物たちです。肖像画の公家装束や色彩豊かな鎧に創作意欲を刺激されました。資料探しからはじめ、ドイツ兵の顔を日本人顔に改造したり、楽しい作業でした。甲冑の構造は複雑で、1/35スケールで再現するにはパテ以外にもプラペーパー、絹糸など様々な材料を試しています。似たパーツをいくつも製作するのは苦行のようでしたが、自分の頭の中だけにあるイメージや工夫が着々と形になっていくおもしろさを存分に味わうことができました。受賞できて大変嬉しく思います。

  • 【アイデア賞】

    [作者] 八木 博顕(56)広島
    [題名] 小泉八雲「怪談」のある風景

    小説などからイメージした場面を模型で再現して遊んでいます。今作は小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の「怪談」より。【耳無し芳一】壇ノ浦で戦死した平家の亡霊と琵琶法師。【雪女】妖怪と人間の結婚と別れの話。【ちんちん小袴】ずぼらな女性に怒った畳の精が爪楊枝を小さな侍に化けさせ懲らしめるお話。幽霊、妖怪、付喪神と三様の怪を演出しました。MMフィギュア改造、プラ材と粘土パテなどで工作。妖怪と1/35サイズで調度品などの小物を作っている時間が楽しいです。小泉八雲の書斎にあった机も添えてみました。

  • 【ジュニア賞】

    [作者] 山田 省平(15)神奈川
    [題名] 煙草休憩−BULGE1944

    戦場写真や戦争映画ではタバコを吸う兵士の姿をよく目にします。戦場での数少ない娯楽、"喫煙"を作品の主題としました。キットは古い戦車兵セットの一人をベースにパテなどで改造。タバコのパッケージはケント紙とアルミ箔などで自作しました。人形の塗装は初心者なので反省も多かったのですが、技法を色々と学べて楽しかったです。台座は枯草の地面を表現してアメリカ軍の弾薬箱をアクセントに配置。人形改造コンテス トは毎年すばらしい作品が多く、ひとつの憧れだったのですが自分の応募作の入賞が叶いとても嬉しいです。

佳作 ※五十音順

  • 【佳作】

    [作者] 青山 祐司(49)愛知
    [題名] 夏休みはどうする家康 〜三方ヶ原のキャンプ〜

  • 【佳作】

    [作者] 大橋 太郎(61)千葉
    [題名] Liberation

  • 【佳作】

    [作者] 岡田 直人(55) 栃木
    [題名] COBRA

  • 【佳作】

    [作者] 奥山 潔 (57)千葉
    [題名] INDIANA JONES from 1981 to 2023

  • 【佳作】

    [作者] 並河 祥太(62)東京
    [題名] 朝起きたら・・・宇宙人がいた!

  • 【佳作】

    [作者] 肥前 健一(63) 福岡
    [題名] Tallyho

  • 【佳作】

    [作者] 虫明 範雄(56)岡山
    [題名] WBC 2023 FINAL

  • 【佳作】

    [作者] 森尾 しょうじろう(51)福岡
    [題名] 陛下とともに

  • 【佳作】

    [作者] 山野 純治(67) 千葉
    [題名] マッドマガジンの少年

  • 【佳作】

    [作者] 渡辺 タクヤ(44)東京
    [題名] サンドウィッチマン 〜THE TOHOKU SPIRIT〜

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第52回人形改造コンテスト参加作品パンフレット
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