ウォーターライン・物語
ウォーターラインの意味
シリーズ名の「ウォーターライン」の意味をご存じでしょうか。そうです喫水線の意味です。ウォーターラインシリーズにラインナップされている各モデルは基本的に喫水線から上の部分だけがモデル化され、下の部分、艦底は再現されていません。そこから、ウォーターラインシリーズの名前が付いたのです。
こうしたモデルを一般的に洋上モデルと呼びます。組み立てて飾るとちょうど船が海面に浮いているように見えるのが特徴です。ところで船の模型というと、喫水線の下の艦底までしっかり再現され、飾るときは専用のディスプレイ台が付いているというのがほとんどです。飾ったときの迫力はまさにモデルの王様という風格があります。タミヤの1/350艦船シリーズなどはこうしたモデルの一つです。
一方のウォーターラインシリーズのような洋上モデルは情景的な仕上げに向いています。タミヤからは海面を表現した海面プレート等も用意されていますから、飾るときに利用してみるとモデルが生き生きと動き出すこと間違いなし。これが洋上モデルの楽しみです。そうそう、できるだけ目の位置を低くして、海面すれすれに見つめてください。いかがですか。
ライバルが手を組んだ
ウォーターラインシリーズはタミヤだけでなくハセガワ、青島文化教材社からもリリースされています。オヤッ?と思われる方もいらっしゃるでしょう。複数のメーカーが同じシリーズをモデル化して展開しているのですから。
実はウォーターラインシリーズは静岡模型教材協同組合の各社が参加して共同で開発しているシリーズです。旧日本海軍の連合艦隊を模型で揃えようという計画はその艦艇の数の多さから、1社でやっていたのではなかなか進まないことが予想されました。そこで、静岡の模型メーカーで構成している組合の各社がいっしょに取り組んで、一気にシリーズの充実を目指そうということになったのです。
ちなみに静岡模型教材協同組合はお馴染みの5月に静岡市で開催される静岡ホビーショーの主催団体でもあります。同じ組合の構成メーカーとはいえ、もちろんそれぞれが独自のラインアップを持ったメーカーです。競合する商品も持っているライバルであることに変わりはありません。それが共同でひとつのシリーズを開発していくというのですから、世界的に見てもきわめて珍しいことです。その結果、シリーズの充実はテンポよく進み、太平洋に消えた連合艦隊がほぼ、1/700スケールで再現されるに至っています。
スケールの不思議
ウォーターラインシリーズは1/700 という縮尺を採用しています。これも、前回お話しした組合での会議で決定したスケールです。このスケールだと旧日本海軍の連合艦隊の中で一番大きな戦艦、大和、武蔵で全長は約37cm、小型の駆逐艦や潜水艦で15cm 前後になります。再現性を考えて小さくなりすぎず、コレクション性を考えて大きくなりすぎず、検討されたのがこのスケールだったというわけです。
海外のメーカーで同じようなスケールのモデルといえば、例えばイタレリの艦船モデルに1/720 スケールのシリーズが揃っています。こちらは艦底まで再現されたモデルです。ただし、喫水線の部分が薄くなっていて、切り取れば洋上モデルにすることもできるように工夫されています。これも、ウォーターラインシリーズの影響なのでしょうか。
1/700 スケールという同一スケールで揃った連合艦隊。スケールが同じということで、戦艦と駆逐艦や潜水艦など、各種の軍艦の比較がとてもわかりやすくなります。島のごとき戦艦や空母に対していかにも小さな潜水艦はやはり海の忍者か。スケールが違っていたのではわからない特徴がより鮮明に際立つのもウォーターラインシリーズの魅力のひとつではないでしょうか。